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ヤフーニュースに掲載されました。

 この度、ジャーナリストで”中国人の誤解、日本人の誤解”の著者、ジャーナリスト・中島恵さんに弊社スタッフを取材していただいたコラムがヤフーニュースに掲載されました。

出典・ヤフーニュース 2017年11月27

 


ジャーナリスト・ 中島 恵
中国人は財布を持たない――。最近、急速なキャッシュレス化で、モバイル決済が主流となり、中国の都市部では現金を持たない人が急増している。最近、日本のニュースでもときどき流れる話題なので、この事実を知っている人も増えているだろう。

そんな中、友人の会社に1人の中国人女性が10か月の予定で研修にやってきた。彼女は果たして財布を持ってきたのか? 日本で財布を使ってみて、どんな気持ち? 興味津々で取材してみた。

大阪・東京などに拠点がある刺繍メーカー、ゴーダグループ。同社では2年に一度、中国にある同社の工場から研修生を受け入れている。中国工場と日本オフィスとのコミュニケーションを円滑にし、言葉だけでなく日本の習慣や日本人の考え方を学ぶことを目的としているが、「日本人社員にとっても、海外からやってきた人をもてなすといういい勉強になる」(同グループ、合田陽一社長)からだ。

これまでに4人の研修生を受け入れ、今回は5人目。ニックネームは「おせん」さん。本名は秀嬋というが、嬋の字が蝉(せみ)に似ているので、当初は「おせみ」という案もあったそうだが、虫の名前はやめようということで、「おせん」さんに。中国人は同じ姓が多いので、社員に親しみが湧くニックネームをつけているとのこと。


そんなおせんさんは1989年生まれの28歳。広東省にある深せん工場の生産部で、日本からの発注を現場に伝える仕事をしていた。アニメを見て日本語に興味を持ち、約2年間勉強して同社に入社。研修制度に応募して来日を果たしたが、来日に当たり新しく用意したもの。それが“財布”だ。

ネットで買ったシンプルな長財布
中国では2014年ごろから急速にスマホが普及し、15年ごろからは銀行とひもづけし、スマホのアプリで決済できる機能が爆発的に広まった。なので、中国で現金で支払うのは海外からの旅行者やスマホを持っていない高齢者くらいだ。おせんさんもスマホ決済を利用していたので、この1年以上、現金を持ち歩く習慣がなくなっていたが、日本に住むことが決まって、早速財布を買ったという。

といっても、デパートにショッピングに行くわけではない。中国人は何でもスマホで購入するのだ。おせんさんはいう。

「日本に来る1週間くらい前にネットで探して買いました。シンプルで飽きないタイプがいいかなと思ったので、これにしたんです。価格は27元、日本円にすると480円くらいですから、とても安いですね。気に入っています」

グレーの長財布で、紙幣と硬貨を別々に入れられるタイプ。カード類もたくさん入れられそうだ。財布の中に入れているのは中国の現金と日本の現金、それに中国の銀聯カードなどだという。

中国の銀聯カードはデビットカード機能がほとんどで、これまでは現金の代わりに銀聯カードで支払いをする中国人が多かったが、それもスマホ決済に移行し、カードそのものを持ち歩かない人も増えてきた。

そんなキャッシュレス社会からやってきて、日本で現金を使う生活はどんな気分なのだろうか?

「そうですね……。現金は目に見えますけど、使うとだんだん少なくなっていくのがわかります。ちょっと寂しい気持ち……かな。それに、外出するときに財布の中にお金が入っているか確認しなければなりませんので、少し不便だと感じることもあります」

スマホの中のお金はただの数字
なるほど。確かにお金はどんどんなくなっていくのがわかる。日本人にとっては、お金が少なくなったら降ろして補充するのが当たり前なので、そういう意識はあまりないだろう。

私は新著『なぜ中国人は財布を持たないのか』の中で、来日した中国人観光客が、日本の店舗ではまだあまりスマホ決済できないところが多いことに驚いた話を書いているが、お隣の国なのに、お金ひとつとっても意識の違いは非常に大きい。

ただし、現金主義の日本にもいいこともあるようだ。彼女はこんなこともいっていた。

「現金は自分のお金だな、と感じるのですが、スマホの中のお金はただの数字、無味乾燥だと感じます。現金のほうが、もっと大事に使わなくちゃ、という気持ちになりますね」

スマホ決済は確かに便利だ。今後、日本でもキャッシュレス化は広がっていくだろう。だが、急速に便利になった中国から日本にきた彼女が、お金のありがたみを実感していることに、私は少しほっとした。

ちなみに社長の合田氏は、財布を持った彼女に「日本人にとってお金は単なるモノではなく神聖で大事なものなので、きれいに並べてお財布の中に入れること」と教えてあげたという。おせんさんの研修期間は来年8月まで。中国の南部からやってきたので「海と雪を見てみたい」というのが彼女の小さな夢だ。